【1】被害の回復について
購入した製品の欠陥により被害を受けた場合、購入した製品を販売した直接の契約関係がある者に対して、債務不履行責任や瑕疵担保責任に基づいて、発生した損害の賠償を求めることができます。
さらに、製品を販売した者だけでなく、製品を作った製造者や製品を輸入した者などに対し、被害の回復を求めることができます。つまり、購入した製品に欠陥があった場合、PL法(製造物責任法)に基づいて、購入した製品を販売した直接の契約関係がある者だけでなく、製品を製造した者や輸入した者などに対しても損害の賠償を求めることができるのです。
なお、1995年7月1日以前に流通に出された製品については、PL法に基づいて損害の賠償を求めることはできません。なぜならば、PL法の適用があるのは、1995年7月1日以降に、製造業者等が引き渡した製造物による事故だからです。この場合、直接の契約関係がある者に対しては、債務不履行責任や瑕疵担保責任に基づき、また直接の契約関係がない者に対しては不法行為に基づき、発生した損害の賠償を求めることになります。
【2】犯罪の成否について
購入した製品の欠陥により被害を受けた場合、購入した製品を製造した者の行為が犯罪になることもあります。つまり、購入した製品の欠陥により死傷者が発生した場合、欠陥のある製品を製造した者が業務上過失致死傷罪(刑法211条)に問われることがあります。
具体的には、製造した自動車に不具合があるのにリコール等の改善措置を取らないで漫然と放置した場合に自動車メーカーが業務上過失致傷罪の刑事責任を負うことになった事案などがあります。
【3】原因究明について
航空事故などを取り扱う運輸安全委員会、製品事故を取り扱う製品評価技術基盤機構などの事故調査機関があります。
また、平成24年10月1日、消費者安全調査委員会が設置されました。同調査委員会は、消費生活上の生命・身体被害に関する事故の原因を究明するための調査を行い、被害発生ないし被害拡大の防止を図るために設置されました。
購入した製品の欠陥により被害を受けた場合であっても、いつまでも責任を問えるわけではありません。欠陥のある製品を製造した者や販売した者に責任があっても、その責任を問える期間は限られています。
民法上の責任のうち、PL法(製造物責任法)については、3年の時効が定められています。つまり、製造物責任法に基づいて損害の賠償を求める場合、損害と損害を賠償すべき者(製品を作った製造者や製品を輸入した者など)を知ったときから3年以内に、裁判所に訴え出るなどの行動をとらないといけないのです。なお、3年の時効の他に10年の時効も定められているので、製造業者などが製造物を引き渡したときから10年が経過した場合も製造物責任法に基づいて損害の賠償を求めることはできません。
一定の潜伏期間の後に被害が顕在化する場合などについては、10年の時効を計算するスタートとなる日が通常よりも遅くなります。また、損害を賠償すべき者(製品を作った製造者や製品を輸入した者など)を知ったときがいつになるかは事案によって異なります。責任を問えるかわからない場合には、遠慮なくご相談下さい。
なお、刑法上の責任について、業務上過失致死罪の公訴時効は10年とされています。平成22年4月27日の法改正により、業務上過失致死罪の公訴時効が、5年から10年に延長されたので、従前よりも刑事上の責任を問われる期間が長くなりました。